日本には明治以来、滝 廉太郎や山田 耕筰を始めとして才能豊かな作曲家による芸術歌曲が数多く作曲されています。

それ等は西洋音楽の形式によるものであっても、日本語と日本人ならではの味わい深いいものであり、心の糧となりうるものです。しかし、近年に到るまで日本の音楽専門の大学では日本歌曲の正式なレッスンは行われていませんでした。その事を疑問に思う学生5、6人が集まって日本歌曲研究会を立ち上げたのは大学2年の時でした。卒業後も「槙の会」と名付け、演奏会や楽譜の編集、出版などを行ってきました。1975年に初版となった”うたいたい歌 ききたい歌 日本歌曲選集”は9刷りまで版を重ねることができました。

今や、日本歌曲コンクールもいくつか出来、大勢の声楽家により日本歌曲が歌われるようになったのは、喜ばしいことです。一つの問題点は、「槙の会」時代以降の名曲が意外と知られていないことです。知られざる名曲等を含めた歌曲選集が出版社の都合で絶版の憂き目にあっているのも残念なことです。

このような状況の中で、八木重吉の詩による八曲からなる連歌曲「花と空と祈り」が出版されました。リサイタルのプログラムやコンクールの最終審査曲にも適していると思われます。連歌曲としてだけではなく一曲づつ取り出しての演奏も可能です。是非お試し下さい。音源となる CD 詩人八木重吉と七人の作曲家「花と空と祈り」を参考にしていただく事ができましたら幸いでございます。